昨年の3月24日、東京オリンピック・パラリンピックの1年程度の延期が決定した。意外と早い決断決定であった。

今、世界の感染状況が昨年より比較にならないほど悪化している。にもかかわらず、IOCには東京五輪中止の考えが微塵もない。IOCだけではない。菅総理を筆頭にJOC、組織委員会、五輪相、東京都知事がそろって五輪強行姿勢を崩していない。

IOCが中止しない理由は「お金」であることは明白だ。恐ろしいことに「お金」がらみで「中止」を言い出せないのはIOCだけではない。日本メディアだ。

その問題を暴露したのが、昨年の延期決定直前のFRIDAY掲載の『「東京五輪は中止を」と言い出せない和製メディアの深刻さ』だ。

今、大手メディアは中止を言いたくても言えない、まさに(お)金縛りにあっているのだ。

“コロナショック” 史上初の1年延期決定までの経緯
NHK 2020年4月20日
2020年3月24日。新型コロナウイルスの感染が世界に拡大する中、東京オリンピック・パラリンピックの1年程度の延期が決定。3月30日には2021年夏に延期されることが決まりました。
世界に感染が広がる中でも当初は「予定どおり」の開催を強調していたIOC=国際オリンピック委員会。オリンピックの開幕まで4か月を切ったタイミングで、大きな決断を余儀なくされました。
「東京五輪は中止を」と言い出せない和製メディアの深刻さ
「東京五輪は予定通り開催」と言っているのは日本のメディアだけ!
FRIDAY 2020年03月23日
ニューヨーク・タイムズは3月18日「Cancel. The. Olympics.(やめろ、オリンピックを)」と言う大きな見出しの記事を発信した。そして「パンデミックの最中に、五輪への道を押し進めるのは野蛮で無責任だ」と強く主張した。
ワシントンポストは3月20日「世界中が歴史的なパンデミックになるおそれがある感染症と闘っている最中に、IOCと日本の当局者たちがあたかも大会を予定どおり開けるかのようにふるまっているのは全く無責任だ」と厳しく非難した。
残念ながら、日本のメディアは、テレビから新聞までどこも「五輪中止」を主張しない。海外メディアや個人の意見は紹介するが、自分たちが「社説」などで「東京オリンピックは中止を」とは言わない。

それは、東京オリンピックの興行、放送に日本メディアが深く関与しているからだ。政権に批判的な朝日新聞、毎日新聞から政権寄りと言われる讀賣新聞、産経新聞までが「がんばれ日本」というキャンペーンを繰り広げている。この報道で部数や視聴率を上げようともくろんでいる。

また放映権は、NHKと民放が「ジャパンコンソーシアム」を組んで、IOCと共同で契約をしている。アメリカの場合放映権はNBCが独占している。他のメディアは無関係なので、オリンピックについて自由に報道するが、日本の場合、新聞とキー局は密接な資本関係があるために「一蓮托生」となり、東京オリンピック開催の是非のようなセンシティブな問題は意見を表明できなくなっているのだ。

今回も、IOC、日本政府が「東京五輪延期」を発表すれば、新聞、テレビはあたかも「そんなことは以前からわかっていた」と言わんばかりの報道をするだろうが、多くの人々は「わかっていたのなら、先に言えよ」と思うだろう。

こういう形で日本の言論は、世間の信用を失ってきたのだ。