ヨーロッパでアストラゼネカ製ワクチンの使用中止が相次いでいる。接種後に血栓ができる副反応が次々と報告されている。オーストリアでは49歳の女性看護師が血液凝固障害(血栓)で死亡したという。このような事例の発生とワクチン接種との因果関係の検証は極めて難しい。欧州医薬品庁(EMA)は、アストラゼネカ製ワクチンを接種した人に血栓が生じた事例は、一般に起こるより多いわけではないようだと指摘している疫学における因果関係のクライテリア(評価)において、時間の先行性(関連のの時間性)は得られている(接種後に血栓ができている)。しかし、血栓ができるという事例は、生活習慣病としての脳梗塞のように、我が国でも年間6万人以上が脳梗塞のため死亡している。平成29年10月の統計で脳血管疾患(脳出血、脳梗塞、およびくも膜下出血)患者数は男性 556千人、女性 558千人の合計 1115千人である。アストラゼネカ製のワクチン接種による脳梗塞の発生の因果関係を検証するためには、生活習慣病としての脳梗塞の発生原因との比較が必要になり、現状の統計学では両者(アストラゼネカワクチンと生活習慣)を区別することはほぼ不可能だ。したがって、EMAのような見解に止まります。そして、決まり文句として「ワクチンがコロナを防ぐ利点は、副反応の危険を上回る」という文言で締めくくることになります。副反応としてのアナフラキシーの発生が女性に偏っているように、ワクチン接種後の血栓が女性に偏って発生するならば、関連の一致性、および関連の特異性(関連の整合性)が得られることになります。しかし、これとて、アストラゼネカとファイザーの違いを持ち出されると評価しきれなくなります。大多数の中のごく少数は、いつもこのようにして見捨てられるのでしょう。